∞∞この続きはコーヒーと一緒に∞∞

その日その時、感じたことを感じたままに。まるで誰かと語り合うコーヒーブレイクのように。

台風の夜

【まもなく上陸】


 先日から「接近中」だった台風12号が、ようやく四国沖に到達、そろそろ上陸しそうです。さすが「ノロノロ台風」と言われるだけあってゆっくりジワジワです。ただ、雨雲の半径は巨大なようで、早くも大雨の被害が各地で出ています。台風の中心から1000キロメートル離れたところでも床上浸水の被害が出ている所もあるとか。
 出来ることなら、最短時間、最小被害であってほしいものですが、そうもいかないのでしょうね。


【嵐の前の晴れ間】


 実は今日、台風が来ると言うので朝から傘を持ち歩いていました。蒸し暑くジワーと出てくる汗が気持ち悪かった今日、いつものバッグと傘を持って……。午後遅くなると黒い雨雲と白い積乱雲が二層になって「そろそろ来るかな」なんて予想までしたのですが、結局暗くなるまでは降らず、帰宅した後でザーと来ました。準備万端怠らずと言えばいいのですが、それでもちょっと肩透かし状態。どうせなら、早いうちに通り過ぎて欲しかったのですが。「嵐の前の静けさ」ならぬ「嵐の前の蒸し暑い晴れ間」です。なんとも自然は気まぐれなものです。


【子供の頃】


 幼稚園に行っていた頃、台風で自宅が床下浸水したことがあります。いつもより早めに父が帰宅。早めに夕食を済ませ台風の接近に備えていた時、玄関を見ると水が入り込んできています。停電したため、ろうそくでその状態を確認した父が母と相談し始めています。母は避難することを考えたのでしょう。着るものをバッグに詰め始めました。きっと貴重品なども入れたはずです。
 その後、一部屋に家族全員で集まり、早めに寝ることにしたのですが、雨の音が激しくて不安感は増すばかり。いつもなら眠たくなる時間になっても寝つけません。
 父が雨戸を開け、懐中電灯で外を照らし出しました。縁側の下まで水が来ています。つまり床下浸水状態。あと10センチほどで床上浸水です。とはいっても経験ゼロの僕にとっては尋常ではないということだけが分かっただけで、その危険性なんて理解できず、不安感だけが増していきます。
 で、どういうわけか、僕は父が会社から持ってきていた工事用ヘルメットを被って雨戸の外、いつもなら「お気に入りの遊び場」のはずの場所を見つめていました。
 とそこへ、お隣りで飼われていた犬用の犬小屋が流れてきました。水の中にプカプカ浮いています。「エッ、犬小屋。犬はどうした?」。僕にとって生まれて初めての被災確認はお隣りの犬小屋だったわけです。もちろん安否確認も初めて。心配だけど、何もできない状態がいっそう不安感を増していったのを覚えています。
 そんなことをしている間に眠たくなったのでしょう。僕はヘルメットを被ったまま寝てしまったようです。
 朝、起きるとすっかり晴れたようです。かろうじて水は床上までは来なかったようです。蒲団が濡れていなかったことがその証明ですが、まだ外に出ることは出来ません。それから数時間経ってからゴム長を履いて外へ。子供ながらに被害状況の確認です。


 父も母も妹も自宅にいます。こんなに家族が揃っていたことがあまりない家庭だったためでしょうか、家族全員で台風を乗り切ったという満足感のほうが、被害が最小限で終わったという安堵感より強かったように覚えています。
 僕にとっては初めての床下浸水、初めての被災確認、そして初めて家族の一体感を感じた台風だったようです。


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