【徒歩とバス】
「わあっ、ひどいめまいだ」。地下鉄に乗ろうと階段を下りはじめた時、数年前まで悩まされていたひどいめまいが突然出たのかとびっくり。手すりを掴み、それでも足りず結局しゃがみ込んで収まるのを待っていました。
ところが、どうも様子が違います。周囲の人たちもフラフラとした足元で右往左往しています。次の瞬間「地震だ、表に逃げよう」という声が聞こえてきました。
「あれっ、めまいじゃないんだ。地震か。それにしてもひどい地震だぞ」。
僕の東日本大震災は、こんなピント外れな状況把握から始まりました。
かなり大きい地震だということだけは分かったのですが、それ以外のことは何も分かりません。とりあえずその日の予定を変更して一旦帰宅することにしました。
ところが地下鉄もJRも動いていない様子。止むを得ず歩いて帰ることに。歩きはじめて20分くらいの時、「バスは動いているよ」という声が聞こえてきたため、すぐにそちらに変更。バス停で約一時間ほど待って、ようやく乗ることが出来ました。車内はぎゅうぎゅう詰め。今、何が起こっているのかも分かりません。外を見ると歩いている人たちのほうが早いような気もします。
なんとか帰宅してテレビを点けると「巨大津波」が三陸沿岸を襲っているところが何度も映し出されています。「アレッ、東京の状況は?」と思いながらも見ていると、ようやく事態が分かってきました。
その後はテレビとラジオ、ツイッターを同時に見たり聞いたり、読んだりすることにしました。市原のコンビナートで大火災が起こったとか、大混雑でパニック寸前になっている駅の光景なども映し出されていますが、大半は津波の映像です。
政府の発表では「大規模災害」とか「自衛隊派遣」という言葉と同じくらい「安全です」とか「落ち着いて」という情緒的な発言があるように感じてしまいました。
なんとももどかしいのです。事実を正確に伝えていると思えたのは報道機関の取材やツイッター上の発言ばかり。政府の発表はどれもこれもあいまいだったり後手に回ったものだったり……。
「政府の発表があいまいなのは神戸の時と同じだな」と感じながらも見続けていたのですが、途中からイライラしてきました。要領を得ないにも限度があります。
〈続く〉
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