【とあるコーヒーショップで】
コーヒーと煙草でブレイクを、と入ったコーヒーショップ。休憩中の営業マンや学生で満員状態のその店に家電量販店のペーパーバッグを“抱えた”青年が入ってきました。そして偶然空いていた僕の隣の席に座りました。
と、ここまではどこにでもある光景ですが、彼の行動は意外なものでした。
家電量販店のペーパーバッグの中から30×20×6センチ程度の白い四角い箱を取り出し、ビニールのラッピングを破り始めました。よく見るとアップルのロゴマーク。ほかにMacbook Airの文字も書かれているようです。
おもむろに箱を開けて中身を膝の上に出しました。まさしく、あの“エア”です。本体のラッピングをビリっと破り、箱の中にビニールを入れました。もちろん本体は膝の上に置いたままです。
なるほど、買ってすぐに見たかったんだと思っていたら、なんと彼は、電源を入れました。“バーン”。あのマック独特のサウンドが響きます。
最初から充電してあることも驚きでしたが、この場所でここまでやるかということのほうが驚きでした。
ひょっとするとここでセッティングまでやってしまうのかななどと思いつつ、チラ見を続けていたところ、思った通り彼はセッティングを始めたようです。
「こんなやり方もあるんだな」と思いつつ、もうひとつ「これはコンピュータを買った直後の心理状態じゃない。スマホや携帯電話を買った時の心理状態だ」と思うようになりました。
おそらく彼にとってアップルのコンピュータは家電感覚で扱うモノなんだろうな、勢い込んでOSをインストールして、インターネットやメールのセッティングをして、ソフトをインストールしてという僕が思い込んでいた“コンピュータとのファースト・コンタクト”とはまったく違う動きです。
この瞬間、正直なところ、僕のコンピュータ感はオールドスタイルなんだ、と思い知りました。
「よし、買ったぞ。さあ、セッティングするぞ。きちんと動いてくれるかな」。こんな感覚はもう古いと気がついたのです。携帯電話を買い換えた時と同じようにコンピュータも「どれどれ、じっくりチェックしないとな」程度で使うものになったのかと軽いショック状態とでも言えばいいのかもしれません。
と同時に、スマホとコンピュータが互換性を持ち始めた今、新たなアップル対マイクロソフトの戦いが始まっているんだと実感した瞬間でもあったと確信しています。
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