∞∞この続きはコーヒーと一緒に∞∞

その日その時、感じたことを感じたままに。まるで誰かと語り合うコーヒーブレイクのように。

ノスタルジック・ジャーニー

【新宿にて】


 30数年前、学生時代に通っていた洋食屋の『アカシア』に行ってしまいました。
 友人との話の中で盛り上がり、それではとリサーチに行き、探しているはずが迷子になって、次の週に再度捜索、ようやく辿り着いたという感じです。
 外観は記憶に残る残像と同じなのですが、なんだか横に広がったような気もします。お店に入るとテーブルが大きくなり、スペースもゆったりしたような。
 オーダーは、当然のことながら、ロールキャベツ。あのドロッとしたクリームシチューが掛かった肉よりもキャベツのボリュームのほうが圧倒的に多い独特のメニューです。昔よりも幾分大きくなったような気もします。価格も数倍になっているような気がします。
 でも、短めのフランクフルトを半分に切って炒めただけの『ペパロニソテー』は無くなったようです。当然といえば当然。当時とは食糧事情がまったく違う今、ソーセージを炒めただけのメニューが洋食屋さんで通用するわけはありません。


 食べながら少しずつ昔のことを思い出していました。
 お金もなく、社会経験もなく、若さと元気だけが財産だった頃のこと。この店は僕にとって「晴れやかなレストラン」でした。ある意味、特別な存在でした。
 しかし、卒業し社会人になって新宿そのものに行くこともなくなり、まったく記憶の彼方に押し込んでいた「若き日」を思い出して、どうも面映ゆいようなモゾモゾするような感覚に陥ってしまいました。ここに長居してはいけないような、ちょっと恥ずかしいような不思議な感覚と言えばいいのかもしれません。


 小さな小さなノスタルジック・ジャーニー。懐かしくて素敵な夜が僕を元気にしてくれました。若き日の甘酸っぱい記憶が明日への一歩の活力になったような気がします。


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