【負けても勝った力士】
角界のロボコップとまで言われた高見盛が引退を発表しました。先日千秋楽を迎えた大相撲初場所で五勝十敗という成績に終わり幕下陥落は免れないギリギリのところまで追い込まれ、止むなく引退の道を選んだとのこと。
大相撲はどちらかというと「ああ、相撲の時間か」程度しか興味のない僕でも、高見盛が“強い力士”ではなく、どちらかというと“負けてもともと”の力士だということくらいは知っています。
当然誰かのファンなんてありません。しかし、高見盛だけは別。取組直前の気合いの入れ方や、悲壮な顔つきを見ていると「この人、大丈夫かな」と思うと同時に「人間、ここまで気合いを入れて不安感を押し込めば何でも出来るんだな」と感心してしまうことばかりでした。
大相撲だからどちらが勝つかに注目することは当然のことなのに、彼だけはどれだけパフォーマンスを上げてくるかが見ものでした。顔を平手ではたき、胸をげん骨で叩き、グワッグワッと肩から腕にかけて力を込めている姿は見ているだけでこちらまで力が湧いてくるようでした。
高見盛の相撲は仕切りの間が見頃というのもおかしいけれど、これほど相撲の面白さを教えてくれた力士はいなかったと思います。もちろん気合いの入れ方も。
これからは“振分親方”という肩書で部屋付き親方を勤めるとのことですが、きっと弟子たちは相撲がワザや力だけでは語れないものだという“大相撲の真髄”まで教えられるでしょう。
高見盛関、ありがとうございます。これからはそのDNAを受け継いだ後輩力士を育て上げてください。
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