∞∞この続きはコーヒーと一緒に∞∞

その日その時、感じたことを感じたままに。まるで誰かと語り合うコーヒーブレイクのように。

下町の自転車屋にて

【何が起こった?】


 今朝、起き出す人も少なくまだ静かな下町の路地で突然大きな音が聞こえました。
 「パーン!」
 たった一回。高く澄んだ音。
 自転車で路地を掛け抜けようとしていた僕は、何が起こったのか判らず、とりあえず自転車を止めて、周囲をキョロキョロしたのですが、どこにも音の原因らしきものは見えません。
 おかしいな、と思いながら再度走り始めた途端、アッ。
 僕が乗っていた自転車の後輪がパンクしていています。走るとギュッ、ギュッという音が聞こえてきます。アレッ。自転車を降りて良く見ると、なんとタイヤに切れ目が。ゴムに埋め込まれた糸が切れてはじけています。
 アレー、やっちゃったよ。正直なところ、タイヤがパンクするまで走ったのかと、呆れてしまいました。


 そんな小さな小さな自損事故の後は、止むをえず自宅までとぼとぼと自転車を押して帰り、自転車屋が開くまで待機。
 頃合いを見計らって、自転車を押して「おしゃべりオヤジ」のいる自転車屋へ。古くからやっている“街の自転車屋さん”で、ご店主は修理に掛けては誰にも負けないワザ師。時折調子が悪くなるとお世話になっている信頼度抜群の店なんですが、問題はオヤジのおしゃべり。20〜30分、オヤジのおしゃべりに付き合わないと直してくれないんです。店の奥で奥さんがいつもどおり、申し訳なさそうな目で僕に合図を送ってくれています。こちらも付き合うのがイヤなら違う店に行けばいいんですから。それでもお世話になるのはこのオヤジに隠れた魅力があるんです。
 「このバランスが長続きの秘訣かな」と思いつつ、おしゃべりに付き合い、ようやく修理へ。30分掛からないよというオヤジの言葉に「おしゃべりと修理が同じかよ」と疑問に感じながらも、預けて帰宅。
 出来あがった頃、再度訪れ、もう30分「おしゃべり」の再開です。パンクひとつ、タイヤ一本でよくこれだけ話題があるなと思うくらい次から次へと話が展開していきます。もっとも、僕は相槌を打つだけで内容は聞いていないのですが……。
 自転車のパンクひとつで数時間。「これも下町のタイム・サイクルなのかなあ」と改めて感じてた一日でした。


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