∞∞この続きはコーヒーと一緒に∞∞

その日その時、感じたことを感じたままに。まるで誰かと語り合うコーヒーブレイクのように。

生かされなかった教訓

【学習されなかった教訓】

 「もう3日間、食べてないよ」。「昨日やっとおにぎり、食べたわ」。「お金も服もなんにもないねん」。「おばあちゃんの調子が悪いけど、まだ元気そうやからお医者さんに見てもらえへんねん」。
 神戸の震災の時にそこかしこで聞いたことばです。あの時の辛い経験を二度と繰り返さないためにという信念のもと、日本の防災担当者はそれまでの常識をくつがえすような方策と教訓を世の中に提案してきました。
 その後の東日本大震災でその方策や知恵の多くは活用されました。しかし、それでも状況の違いなどから新たな方策が必要になリ、それも大災害時の対応策として蓄積されました。
 特に救助、医療、行政などの分野での対策の充実はそれまでと比べ、見違えるようになったと思っていました。たとえば、二次災害を防ぎながら救助する自衛隊やレスキューの動きであったり、できるだけ多くの人を助けるためにトリアージされることが一般的になった医療体制がそれです。

 しかし、今回の大災害でもこれまでの教訓が生かされなかった分野が出てきました。避難所と救援物資。
どうしてこのふたつのアクティビティは大地震が起こるたびに想像出来ないほどの混乱を起こすのでしょう。
 今回の熊本でも避難している皆さんから「避難所の数が少ないうえに狭すぎる」「小さな子供がうるさい」「水や食料がない」「隣の避難所には食料がいっぱいある」というような声が大きなうねりになって聞こえてきます。
 行政も政府もやっと対策を取り始めたようですが、被災直後のもっとも恐ろしい時期になんのケアもなかったことはトラウマとして残るということはこれまでの教訓が示しているはずです。

 災害直後の動きの中で救助や医療などの動きとは別に、ロジスティックは宅配業者のノウハウを活用したほうが混乱がない。援助物資を整理して振り分けるカウンター役は被災地以外の行政から来てくれた担当者が行い、被災地の行政担当者は地域のガイド役に徹したほうが状況把握がスムースになる。避難所コミュニケーションは災害関連のNPOと一般ボランティアに任せたほうが円滑になる。これらはこれまでの大災害から導かれた法則だったはずなのに、最初の地震が起こってから数日経ってから、ようやくあるべき姿にたどり着くなんて。
 行政の担当者だって、それぞれ全国的な報告会で知っているはずなのに、どうしてこうなってしまったんでしょう。はっきり言って残念です。知識を活かす以上のスピードで人も物資も動きはじめてしまい、手がつけられなくなってしまった、としか思えません。
 行政の皆さん、被災者、つまり地域住民の安定と安全を願うなら、冷静に状況を見据えて、仕事のやり方を見直してみませんか。お願いします。

[1997]