∞∞この続きはコーヒーと一緒に∞∞

その日その時、感じたことを感じたままに。まるで誰かと語り合うコーヒーブレイクのように。

あのオヤジ、元気かな

【いつもの散髪屋にて】

 今の我が家に引っ越して以来、ずっと通い続けている散髪屋へ。数年前、東京の下町ならではの僕のお祭りカットを「面倒だから髪の毛を伸ばしてよ」と、散髪屋にはあるまじき言葉を投げかけてきたオヤジがいた散髪屋です。

 ハサミを持ちながらヘアスタイルを変えろと言ってみたり、ひげ剃りの最中に答えが必要な質問を投げかけてきたり。そうかと思うと、発達障害らしい子供が来れば、その時取り掛かっていた客を待たせてまで子供を散髪していたオヤジ。
 自由奔放な仕事スタイルだったあのオヤジがリタイヤしてから約1年。後を継いだ息子さんも「大将役」が板についてきたし、昔からの職人さんは相変わらず黙々と仕事をしているし。以前と違うのはあのオヤジがいないことだけです。

 でも、どこか違う。失礼千万で大胆不敵だった口調と繊細そのものだったワザが同居した「変なオヤジ」が発する辛口の世間話が聞けないとこの店の良さが半減したような気がするんです。
 お孫さんと手を繋ぎながら「コイツの友だちでいたい」と言って、どこまでも好き勝手を貫き倒す生き方もいいでしょうが、毒舌を聞けなくなったこちらとしては寂しい限り。いいかげんに復帰しろよと言いたくなってしまいます。
 たしかに、オヤジがリタイヤして以来、物静かな息子さんの腕が目に見えて上がったので、将来を見据えたオヤジの決定は正しかったと言えそうですが、あの毒舌が聞けないとなると、どうもシックリとこないんです。

 「職人は口でサービスするよりも腕で勝負しろ」という古風な考え方を貫き倒したオヤジ! 孫と遊んでないでもう一度ハサミを握ってくれよ、寂しいじゃないか。

[2722]