∞∞この続きはコーヒーと一緒に∞∞

その日その時、感じたことを感じたままに。まるで誰かと語り合うコーヒーブレイクのように。

今度こそ省庁の障害者雇用は成功するのか

【専門職がいなければ成立しない事業のはずなのに】

 「障害者雇用を積極的に進めるためには省庁が率先して」という名目で始まった事業が、実は捏造やごまかしだらけの数字上の成果でしかなかったという事実が表面化して約2カ月。いまだに各省庁から新たな問題が噴出しています。

 障害者を雇用するには多くの準備が雇用者側に求められます。バリアフリーの作業空間はもとより、障害の種類によってそれぞれ異なった設備が必要になります。
 しかし、物理的に解決できる設備以上に必要なのが作業を見守る人です。民間企業が政府の達成目標をクリアさせるのに苦心したあげく、義務が果たせずに納付金を支払っているのがこの問題でしょう。

 法律では、事業主は常時雇用労働者数の2.2%以上の障害者を雇用しなければなやないことになっています。また、障害者を5名以上雇用する事業所は「障害者職業生活相談員」を選任して職業生活全般の相談・指導を行うことが義務付けられています。
 つまり、常時雇用の従業員300人の事業所には6名の障害者雇用が義務付けられ、同時に障害者職業生活相談員が最低1名が必要なのですが、この「障害者職業生活相談員」の資格が狭き門なのです。

 「障害者職業生活相談員」の定義は「適職の選定、職業能力の開発向上など職務内容について」「障害に応じた施設設備の改善など作業環境の整備」「労働条件、職場の人間関係など職場生活に関すること」「余暇活動」「その他の職場適応の向上」など職業生活全般についての相談や指導を行う者とされています。
 また、その資格を取得するためには次のような条件のうちひとつを満たしていなければいけないとされています。「職業能力開発総合大学校の福祉工学科での長期過程の指導員教育の修了者もしくはこれに準ずる者」「職業能力開発大学校もしくは職業能力短期大学校での高度職業訓練の修了者」「訓練修了後1年以上障害者の職業生活に関する相談及び指導の実務経験を有する者」「学校教育法による高等学校を卒業後2年以上障害者の職業生活に関する相談及び指導の実務経験を有する者」「その他の者で3年以上障害者の職業生活に関する相談及び指導の実務経験を有する者」。
 ちなみに、この相談員をフォローする立場の人間としてジョブコーチという制度がありますが、そちらも障害者雇用の現場での経験がないと取得できません。
 つまり、デイケアセンターなどで働く介護福祉士などの資格とはまったく違う資格が必要なわけです。単なる想像ですが、医師や看護師の免許を持っている人数の方が多いはずです。

 「いったい何人の人が障害者の職業生活を見守る適格者として活躍しているんだろう」。「省庁はそんな人たちを完全に確保出来ているんだろうか」という点が素朴な疑問として浮かんできます。

 障害者職業生活相談員やジョブコーチを確保して、障害者雇用に真剣に取り組んでいる企業と比べ、官庁のそれは「員数合わせ」の域を脱していないのではないか、障害者差別を解消させるための意識改革を進めているのか……。どう考えても大きな疑問だけが残ってしまいます。

 いくら障害者登録を見直し、追加で雇用すべき人数を増やしたとしても、結果的には今と変わらなかったというようなことにならないように願うばかりです。
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