∞∞この続きはコーヒーと一緒に∞∞

その日その時、感じたことを感じたままに。まるで誰かと語り合うコーヒーブレイクのように。

≡≡ 「ヴ」に降り掛かった災難 ≡≡

今に始まったことではないけれど

 今年の3月、国名表記に「ヴ」の文字を使わないとする法案が通過しました。正確に言えば「ヴァ・ヴィ・ヴ・ヴェ・ヴォ」を使わなくするということです。

 実はこの決定、どうでもいいじゃないかと考えることなかれの問題だと僕は思っています。
 ここ数十年間に渡って使うだの使わないだのと喧々諤々の意見が飛び交っていた問題が再燃したなと感じてはいましたが、すぐに沈静化するだろうとたかを括っていたんです。ところが、どうも今回はそうでもないようです。

 結論から言うと、すべての外来語に適用するするのには違和感があります。

 大まかに言うと、アルファベットの「V」で始まる外来語をカタカタ表記する時は「ヴ」で表記するようにしてきた僕にとって「ヴ」は大切な文字なんです。一部の単語を除き、特に名詞に関しては、ベルベットはヴェルベット、バイオリンはヴァイオリンといったように使ってきたのに、そうそう簡単に「使えなくなりました」とはいかないんです。

 「多くの人にとって馴染みやすくする」という法案の提出理由も判らないわけではありません。また、法案を提出した外務省だってここまで大袈裟なことになるとは思っていなかったのかもしれません。
 しかし、文章は切り取られたあと単独行動し始めるという法則が働き始めるのは時間の問題。結果的に、単語が本来持っているニュアンスを無視したり、書き手の心情や置かれている背景を考慮しない味気ない言葉使いが増えていくわけです。

 たしかに、キーボードで「V+子音」で表示されることを知らない人から「ヴ」や「ヴェ」が打てないから仕方ないだろうという方もいらっしゃいました。
 また、言葉は時代の流れのなかで変化するものだから、表記は簡単なほうがいいとおっしゃる方もいらっしゃいました。

 でも、言葉ってそんなものなんでしょうか。

 僕は、かの丸谷才一氏の持論でもある「蝶」は「てふてふ」、「○○でしょう」は「○○でせう」と書くべきだと主張されました。僕はそこまでの古典的言葉遣い主義者ではありませんが、外来語をカタカナ表記する時だけに発生する問題に手を突っ込まれるのには強い違和感を覚えてしまいます。

 「ヴ」は「ヴ」でいいじゃありませんか。

 皆さんはどうお考えでしょう。「ヴ」と「ベ」は同じ意味合いをもった文字なんでしょうか。

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