解体作業は
明日の街を守る保険
東京下町にある我が家はいわゆる “木密地域” のど真ん中にあります。路地は広い所でも幅4m程度。古い木造建築がギッシリと建て混んでいる地域です。
もし火事が起こっても消防車は入ってこれません。放水する時は遠くからホースを伸ばすしか方法のない地域です。
余談ですが、この住み家に引っ越してきた頃、お隣りが燃えるという大事件が起こり、深夜の街を逃げ惑った経験は今も私の脳裏にこびりついています。
そんな街ですが数年前から老朽化した住宅の建て替えが盛んに行われるようになってきました。当然、建て替えに伴う道路拡張も行われています。その結果、不十分だけど建て替えた所だけは道幅が広いという “いびつな街並み” が至る所で起こっていますが、そんな新築住宅の前を通る時は「なんとなく広くなって安全性が増したかな」と感じています。
今、我が家の直ぐそばでも住宅の建て替えが始まり、朝から大きな騒音を出しながら解体作業が行われています。
ウルサイし、埃っぽいです。でも、ホッとしています。
なにしろ道路が拡張されれば消火拠点も出来るし、なによりも延焼・類焼の危険性も減るんですから。
100年前に起こった関東大震災では、火災による死亡者が全被災者の9割を超えたと言われています。戦時中の東京大空襲で亡くなった方も含めれば30余年で10万人以上の方々が火災で命を落としたことになります。
壊滅状態に陥った台東区、墨田区、荒川区などの東京下町エリアはそのたびに復興を果たしてきました。住民の防災意識を高める施策も数多く行われています。それでも、まだまだ充分とは言えません。根本的に住宅が多すぎるんですから。
そのうえ、防災意識が乏しい外国人の移住も相次いでいるため「地域で街を守る」という意識も薄れがちになっています。
街の景色が変わっていけば次に起こる大災害の被害も減るのではないか。そう信じれば解体作業のウルサさや埃っぽさが「明日への希望」に思えてくるんです。
大災害でもっとも怖いのは「火と水」。そして「無知と意識の低さ」です。下町人として防災の日(震災記念日)を過ぎた今日、改めて気持ちを引き締めています。
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[season13┃02 Sep. 2023┃12:15 JST]
┃TOKYO : BACK to CAMPUS┃
rikkyo Univ. toshima city.
Photographed on 26 Jun. 2022