∞∞この続きはコーヒーと一緒に∞∞

その日その時、感じたことを感じたままに。まるで誰かと語り合うコーヒーブレイクのように。

井原西鶴の『世間胸算用』

暮れも押し迫ったこの時期、毎年読みたくなるのが、元禄時代の大衆小説といってもいい井原西鶴の『世間胸算用』である。
現代では「盆暮れ」といえば「お中元とお歳暮」をイメージするが、江戸時代の「盆暮れ」は掛売りで買ったものの支払い期日を指すものだった。いわゆる節季払いである。それも支払いに行くというよりも集金に来るものだった。しかも、大晦日を過ぎると支払い義務が消えるという、今では考えられないような支払い方法だったのだ。
この習慣を20の短編にまとめたのが大阪を地盤にした江戸時代の人気作家、井原西鶴の著作、『世間胸算用』である。なんとか集金しようと朝から出張っている商人(あきんど)と、なにがなんでも逃げようとする庶民たちの悲喜こもごもや知恵比べを書き綴った作品で、江戸時代の庶民のたくましい生き様を一年に一度訪れる特別な一日の出来事として描ききっている。
西鶴といえば『好色一代男』などの「好色」シリーズや『日本永代蔵』や『世間胸算用』のような経済事情を織り込んだ町人物など数十作品が残っている。
その作品は「浮世草子」というジャンルに分類されている。今で言えば大衆小説である。しかし、経済事情、恋愛事情、遊郭事情などを、したたかでたくましい町人の生き様を舞台に展開させたその作風は今でも敬意を払うべきものだと確信している。
ところで、作品は作品として、僕がするべき支払いも大晦日を越えればなくなるというようにならないものだろうか。夢の中だけでも、そうなって欲しいものである。
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