【気分だけでも味わいますか】
夏も近づく八十八夜 野にも山にも若葉が茂る あれに見えるは茶摘(ちゃつみ)じゃないか あかねだすきに菅(すげ)の笠……
おなじみの唱歌『茶摘』に歌われている茶摘みの季節がやってきました。
ここには春分から数えて八十八夜経った頃に一番茶を収穫するという意味だけでなく、茶の収穫に続いてほかの農作物も含めたその一年の収穫が始まる日という意味も込められているとか。つまり茶の収穫は農作物の先陣を切っていたわけです。
ちなみに、茶道の世界ではこの頃に収穫された茶を茶壺に詰めます。そして、茶人の正月と言わている11月にその年の新茶を味わうために茶壺の口を開く「口切」の茶席に供します。
ところで「八十八」の字を合わせると「米」という字になります。つまり、この時期は田植えの時期でもあるわけです。
「八十八夜」には茶を収穫し、米を植える。そして春分の日から数えて二百十日頃の中秋には米の収穫が待っています。
春分から数えて八十八夜。さすがに新茶というわけにはいかないけれど、その気分だけでも味わってみたい雑節です。
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