消費税は“預かり金”のはずなのに
新年度が始まった今日、消費税の表示方法が変わった。消費者の混乱が起きないように価格表示は、例外を除いて、「税込」か「税抜+税込の併記」に限るという税法改正がとうとう実施されることになったのだ。
そもそもは平成25年に法制化され、それ以降今までの8年間は特例措置が取られていたものが、とうとう実施されることになったわけだ。
とはいっても、一部のネット通販は以前から税込表示になっていたし、雑誌で紹介されるものについては税込表示が一般的だったので、影響が出るのは店頭販売時の表記が中心になるはずだ。
この総額表示、消費者にとっては支払金額がすぐわかるので便利といえば便利な制度だが、一方で、国の本心は消費税の存在を曖昧にするところにあったのではないかとも考えられる制度である。
32年前に消費税が導入されて以来、モノを買う時には商品本体の価格にその価格に見合った消費税が上乗せされるようになった。
その上乗せされた消費税は各企業が法人税や個人事業税とは別に決算時に国に収めることになっているのはいまさら言うまでもないだろう。
ところが“買う側”には、いまだに「消費税は顧客が国に収める税金を小売店や企業など“売る側”が一時的に預かっている金額」という仕組みが理解できないという風潮が残っている。たとえば「消費税分値引きしてよ」という交渉テクニックはその際たるものといっていいだろう。
今回の総額表示の義務化でも、総額だけを表示すると値上げと間違えられるのではという心配が“売る側”には多くあった。おかげで実質的な値下げになった商品もあったが、一般的には表示方法に工夫を加えて対処したという例が多かったのではないだろうか。
アメリカのSales Taxのように$○○ with Taxとしていれば“売る側”と“税を徴収する州”の区別がハッキリとするのに、日本では「売りたい価格」と「それに上乗せされる売上税」の違いを明確にすることなく“どんぶり勘定”で済ませてきた結果が今回の総額表示ではないだろうか。
商品の総額表示は「モノを買うたびに納税している」という意識を希薄にするにはもってこいの制度。
これで国は素知らぬ顔で収税出来るようになる一方で、“売る側”には価格設定の見直しや交渉という新たな悩みが生まれるという図式が完成した。
[0401 - 3738]