∞∞この続きはコーヒーと一緒に∞∞

その日その時、感じたことを感じたままに。まるで誰かと語り合うコーヒーブレイクのように。

≡≡ 皐月・五月・May ≡≡

「五月晴れ」は
大歓迎したい“誤用”

 2023年5月1日。特に今年は雨上がりの澄んだ空気が心地よく感じる一日になりそうだ。

 5月は和暦で「皐月」と呼ばれている。稲の作付けが盛んになる「早苗月」という言葉に、神に捧げる「皐(さ)」を当てて「皐月」としたとも言われている。
 だが、もともと旧暦の5月は新暦に換算すれば6月半ばのこと。つまり皐月は梅雨時分を示す月名だったわけだ。梅雨時分といえば田植えの時期。雨が降り続くジメジメとした時期である。
 となると、心地よく晴れ渡った日を形容する「五月晴れ」という言葉の立ち位置があやふやになってくる。どう考えても、ジメジメと爽やかは両立しない。

 資料を探してみると、もともと「五月晴れ」は梅雨の晴れ間を示す言葉だったらしい。それがいつの頃からか、5月らしい爽やかに晴れ渡った日を指す言葉に変化し、誤用が定着したというわけだ。
 本来は初冬の穏やかに晴れた日だったはずの「小春日和」が、早春の晴れた日に使われる誤用と同じ発想といってもいい。

 一方、英語で5月をMayというのはご存知のとおりだが、本来は、古代ローマで毎年5月1日に斎行された「豊穣の神Maia(マイア)に供物を捧げる神事」が語源だと言われている。つまり五月祭(メーデー)である。現在メーデーと言えば「労働者の祭典」を示すことが多いが、そもそもは神事だったわけだ。

 月名に限らず誤用が定着した例は数多い。ほとんどが「アレッ、そうだったの」と驚いてしまうものばかり。言ってみれば、言葉は時代時代で使い易いように変化してきたわけである。思い出せば言葉だけではなくモノゴトすべてに本来の意味が誤用されて定着した例は数え切れないだろう。

 と、細かなことを言いながらも、私は今日の天気を堂々と「五月晴れ」と言いたい。梅雨の晴れ間は「梅雨の晴れ間」でいいではないか。特に心地よく晴れた5月の晴天には「五月晴れ」が相応しいと思う。

 五月晴れで始まった5月。今月が快適に過ごせるひと月になりますように。
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[season13┃01 May 2023┃11: JST
┃CHERRY BLOSSOM in YANAKA 9/9┃
at kaneiji & yanaka cemetery, taito city.
Photographed on 02 Apr. 2022