∞∞この続きはコーヒーと一緒に∞∞

その日その時、感じたことを感じたままに。まるで誰かと語り合うコーヒーブレイクのように。

1001といえば

アラビアンナイト


 1001という数字を聞いて最初に思い出したのはアラビアンナイトでした。


 今は昔、ペルシャの王様が夜ごと若い女性を王宮に連れてこさせ、朝になると殺害していました。この悪習を止めさせようとしたシェヘラザートという女性が夜ごと物語を語り聞かせることで王様を改心させようと決心、1001夜目に王様は改心し、シェヘラザートと結婚することになりました。 全部で260以上の物語が書きしるされたその夜話のなかには『アラジンと魔法のランプ』や『船乗りシンドバットの冒険』、『アリババと40人の盗賊』など誰もが一度は読んだことのある物語が含まれています。


 というものだと思っていました。しかし、この物語集はもともとアラビアやペルシャに伝わっていた民話をアラビア語で書き起こしたもの。ひとりの著者が書きしるしたものではなかったのです。それぞれの物語をつなげるためにシェヘラザートと王様というキャラクターを立てて、二人の会話を“つなぎ”や“流れ”に使った「民話集」だったわけです。


 日本でいえば、柳田國男が東北の民話を聞き書きしてまとめた『遠野物語』が有名です。河童や天狗など東北地方に伝わる民話を集めたものですが、民話の一つひとつを淡々と紹介していくもの。編集技法的には圧倒的にアラビアンナイトのほうが優れていると言わざるを得ないようです。


 正史はともかくとして「連れてこられた女性が1001夜に渡って命がけで物語を語り、遂には王様と結婚した」というほうがスリリングなうえにロマンチックだと思っているのは、僕だけではないはずです。
 一夜のショート・ストーリーで一日長く生きられる……。これほど貪欲に生きることを追求した物語はほかにないと思っていたのに……。まさに編集能力が問われる一冊だったわけです。


 1001回。これからの目標はシェヘラザート、かな。そんなことを考えながら今日もバックナンバーを書きこむことにします。


[1001]