∞∞この続きはコーヒーと一緒に∞∞

その日その時、感じたことを感じたままに。まるで誰かと語り合うコーヒーブレイクのように。

日曜日の夜

【波乱のない一夜】

 お盆シーズン最後の日。例の友人夫婦と一ヶ月ぶりの定例会を開きました。時にはいつもの慣れたレストランではなく、まったく初めての場所で食事をしてみましょうと企画して現地へ。
 正直なところ、今回の場所選びには一抹の不安がありました。というのも彼は見慣れた場所以外では非常にセンシティブになってしまうことが多かったんです。たとえば完全に心を閉ざしてしまったり、急に動きまわってしまったり。ビールをグラス半分だけ飲んだあと、興奮して大声で怒り始めたこともありました。
 そんな状態になっても「周囲を認識しているから」とか「自意識をなんらかの形で表現しようとしている」という前向きな対応をしてきました。

 奥様が可能な限り避けてきた興奮を抑える薬をやむを得ず増やして、表面的には穏やかな印象を取り戻した彼。初めて訪れたレストランでも騒ぎを起こすことはありませんでした。目の前に置かれた食事を僕たちと同じペースで食べ、時には僕の話にも応えてくれました。
 ただひとつ気になったことは彼の目線。虚空を見つめていると言えばいいのでしょうか、どこかしら虚ろなんです。薬が効いているからと言ってしまうにはあまりにも残念な状態。記憶を辿ることも難しそうだし、自我を表現するのもひと苦労している様子でした。
 寂しい。あまりにも寂しい。ジャズに関してのずば抜けた造詣を披露してくれたり。ほどよい気配りでもてなしてくれた彼の姿は、今や僕や奥様の記憶の中だけに生きているかのようです。それでも、今という時間を共有できることこそありがたいと思いつつ楽しい時間を過ごせたように感じています。

 状態が変化してもそれなりの対応ができるように心がけながら、これからも一ヶ月に一回の定例会が続けられますように。

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