【風情なく過ぎていく夜】
今日は中秋の名月。月を愛で、秋を愉しむ夜ということですが、僕にはまったく無縁。なにしろ今もキーボードの前にいるのですから。
それにしても──。
日本ならではの年中行事から疎遠になってしまいました。言葉では生きていても実際はうつりゆく季節を感じるだけで、そこに秘められた「心」を昔の人たちと共有するのは困難になってしまいました。
しいて言えば、正月や彼岸のように捉え方は変わったものの、生活の中に生きている伝統行事もありますが、多くの行事は言葉や知識の世界にだけ存在しているのではないでしょうか。
僕が子供だった頃、中秋の名月になれば祖母が月見団子を作ってくれました。床の間にはすすきも飾られました。しかし僕は、それらに見向きもせず、テレビを見たり、漫画を見たり。9月の満月に思いを馳せるなんて想像もできませんでした。
あの頃、もう少し興味を持っていれば日本らしい「風情」を身体に染み込ませることができたのに。この歳になってようやく「風情を頭で感じる」ことができるようになったのかもしれません。だから、今夜が曇っていても残念には思えないわけです。なにしろ「身体に染みこんだ心情」ではないのですから。
少し散歩に出掛けます。月が見えればそれで良し。ほんの少しの時間でも1000年以上前に生きた人たちと感覚を共有できれば悠久の時を感じ取ることができるかもしれません。
ということで。明日が素晴らしい一日になりますように。では、行ってきます。そして、おやすみなさい。
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