∞∞この続きはコーヒーと一緒に∞∞

その日その時、感じたことを感じたままに。まるで誰かと語り合うコーヒーブレイクのように。

≡≡ “のし餅”のご予約あずかります ≡≡

下町の年末風景に垣間見える
家族の繋がり

 いつものように七分搗きにしたブレンド米を買いに三ノ輪の商店街へ。

 気取ったところは一切なし。歩行者と自転車が入り混じって行き交う典型的な下町商店街をゆるゆると自転車を走らせていると、和菓子屋さんの店頭に「のし餅のご予約あずかります」のノボリが立っていました。何気なくやり過ごして、お米屋さんに到着すると、なんと、この店の店頭には大きな張り紙が。この時期、この商店街ではお米を扱うお店は“のし餅”の予約が必須なようです。

 正月用のお餅はスーパーでお鏡風なパッケージに入ったものを買うのが一般的だというのに、下町ではいまだに“のし餅”の賃搗が幅を効かせています。ただし、お鏡餅とのし餅のセットではなく、合理的にいこうという発想なのか、それともほかの理由があるのか。ともかく二軒とも“のし餅”だけが予約対象というのが気になりますが。

 お歳暮とクリスマスと正月が混在しているデパートやスーパーと比べてなんと潔いことか。和菓子屋さんやお米屋さんはひたすら正月に向かって突き進んでいるようです。

 そんな素朴な感覚のPOPを見ながら僕は改めて「あー、いいなあ。年末だなあ」と感じてしまったのです。

 日頃はすれ違いの多い家族でも正月だけはと集まって食卓を囲み、雑煮を食しながら、質素だけれど穏やかで幸せな時間を過ごす。そのためには搗きたての“のし餅”が欠かせない。そんな庶民生活の一端が「のし餅の予約」に表れているような気がしてならないんです。
 儀式でもなく、華やかな付き合いの場でもない、かと言って無視するわけでもない。地に足のついた暮らしを営む家族のための正月。勝手な空想を巡らせてしまって恐縮ですが、僕はこんな正月の過ごし方にある種の羨ましさを感じてしまいました。

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