複雑な心境
年末年始に香港へ行った時、滞在中に一度は「ヘビスープ」を食べるのが僕の定番でした。フランスに行くと「ジビエ」や「うさぎ」や「カエル」が食べたくなるのと同じ感覚で、年末年始の香港と言えば、春節の縁起物とか、ひと冬風邪を引かないと言われている「ヘビ」というのが僕のお約束だったんです。
アッ、念のため言っておきますが過去形ですからね。
日本では単なるゲテモノでしかないものだけに、身分不相応な高級店でもいいからきちんと料理してくれそうな店を慎重に選んではいましたが、所詮“ヘビ食い”。最初に挑戦した時はおっかなびっくりでした。
ところが一度食べてみると、これがけっこうイケるんです。
漢字で書かれたメニューに「蛇」と「羮(かん)」の字があるものを探し、「三種」より「五種」、ホテルのメインダイニングなら「七種」を選ぶ。これが僕の選び方です。
ヘビ肉をほぐして、たけのこ、しいたけなどの野菜と一緒にトロミのある煮込みスープと言えばいいのでしょうか。レモングラスの爽やかな酸味と香りが食欲をそそってくれます。ちなみに食感は、弾力のある鶏のササミといったところ。ジビエのような“特有の匂い”はありません。あくまでもササミです。
このスープをスターターにしてメイン料理を楽しみ、最後に水餃子と中国風のおしるこで締めれば中国の人と同じように春節のお祝いをしたような気分になれたわけです。
ああー、それなのに。ヘビが新型コロナウイルスの重要な感染源だったんですね。
さすがにコウモリ(きっとフルーツコウモリと言われているものでしょう)やヘビの丸焼きを食べる気にはなりませんが、肉の原型が見えないスープなら問題なしと信じ込んでいたのに残念至極です。なにしろ洋食とは言え、極めて野生に近いですからね。
マッ、日本で挑戦するならサラダチキンで代用すべしというところですかね。
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