∞∞この続きはコーヒーと一緒に∞∞

その日その時、感じたことを感じたままに。まるで誰かと語り合うコーヒーブレイクのように。

≡≡ 『芒種』の節季 ≡≡

将来に向けて
意志を持って、歩み始める時

 6月6日。二十四節気の『芒種』の節季がやってきた。江戸時代に編纂された『暦便覧』には「芒(のぎ)ある穀類、稼種する時なり」と記されている。時代が移り変わったためズレが生じているが、要するに田植えの時期である。
 一方、6月6日は稽古始めの日でもある。能の権威を確立した世阿弥が著した『風姿花伝花伝書)』の冒頭に「この芸において、おほかた、七歳をもてはじめとす」と記されていることから「芸事を始めるのに適した時期」と言われている“第一歩”の日とされてきた。満年齢で言えば6歳6月6日というわけだ。

 田植えであれ、芸事であれ、『芒種』の節季が始まる今日は“将来に向けて意志を持って歩み始める日」と解釈できなくもない。先達たちが残してくれた思想やスキルを活用して実りのときに向けて修練を始める日と捉えれば年齢も関係ないだろう。今風に言えばリスキリングである。

 ところで、『芒種』の時期は梅雨空の下で紫陽花が咲き誇る時期でもある。紫陽花は、同じ株から咲く花の色が白から薄緑、青、紫、薄紅色と色合いを変化させていくため「紫陽花の七変化」とも言われているが、時とともに変わりゆく姿を“成長の証”と捉えることもできる。

 何事もモノゴトは変化を繰り返して実りの時を迎えるものである。そんな出発点になるのが『芒種』の節季なのかもしれない。
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[season13┃06 Jun. 2023┃11:40 JST
芒種』の節季:梅雨時。田植え時。稽古始め。紫陽花
┃AJISAI:hydrangea┃yanaka, taito city.
Photographed on 12 Jun. 2022