【大雨になった夜】
小糠雨(こぬかあめ)、霧雨(きりさめ)、地雨(じあめ)、にわか雨、狐の嫁入り(きつねのよめいり)、五月雨(さみだれ)、時雨(しぐれ)、驟雨(しゅうう)、篠突く雨(しのつくあめ)、大雨(おおあめ)、村雨(むらさめ)……。
日本語には降り方や季節、あるいは地域などによってさまざまな“雨”の表現があります。雨との共存というか、どのような雨でも受け入れる心情が数えきれないほどの雨の名前を生んだのでしょう。
フワフワと中空を舞うような小糠雨から、恐ろしいくらいの土砂降りを表す篠突く雨まで。五月雨や時雨のような季節を表すものもあります。
それなのに……。近頃は豪雨と雷雨と大雨の三種類しかなくなったのではないかと感じています。
昨日の夜の雨もそうでした。電車を降りて改札を出た途端、ポツ、ボツ、ザー、ザザー。急な豪雨が襲ってきました。朝の天気予報を信じて持ち歩いていた折り畳み傘を出して歩き始めたのですが、ほんの数分も立たない間にパンツのひざ下までビショビショに。結局、濡れなかったのは顔から上だけという状態。
さっぱりとして強い夏らしい雨の降り方といえばそうですが、それにしても……。雨の中、歩いていて「水の国、日本」の雨からは風情や情緒というものがなくなったのだろうかと考えてしまいました。
地球温暖化の影響で日本が亜熱帯化し、雨の降り方も変わってきたという専門家の意見もありますが、豪雨や雷雨しかないとしたら寂しいかぎり。雨を表す言葉が小説の中だけの言葉にならないように願いたいところです。せっかく雨と共存してきたのですから。
それにしても、昨日のような突然の豪雨だけはご勘弁いただきたいところです。
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