いつもの米屋にて
初荷にしてもいいけれど、松の内から慌てるのもいかがなものかといつもの米屋に行ってきた。もう20年以上お世話になっている米屋である。
いつものブレンド米をいつもどおり七分搗きで仕立ててもらい、「良いお年をお迎えください」と挨拶を交わす。ただそれだけのことのはずだった。
ところが、今年から「米屋のお餅」という名でちん搗き餅を売り出したせいか、大繁盛の様子で店主のおばさんは大忙し。店内を文字通り走り回っていた。私が入っていったときもいらっしゃいませのご挨拶だけで世間話は一切なく、何も聞かずに私用の米を搗きはじめてくれた。
この店主がこんなに忙しそうに動き回っているのを見るのははじめて。ちん搗き餅の効果は絶大のようだった。
例年なら正月は温泉で過ごしたり、実家に帰省したりしている家庭も、コロナ禍の今年は自宅で過ごそうということで正月準備をしているのかもしれない。
餅ひとつで今年の正月風景はこれまでに見たことのないものになりそうだと感じるのは早計だろうか。なんらかのコロナ・バイアスが掛かっていることは間違いないように思う。
今日の風景を見るかぎり、年明けにはコロナ禍も落ち着きを取り戻すのではないだろうか。いや、そうであってほしい。
ちなみに和菓子屋で正月餅を調達している私には米屋の餅は無用なもの。お歳暮代わりに何かをと店主が選んでくれたのは南魚沼産のこしひかりだった。よほど大繁盛に気を良くしたのか、大判振る舞いである。
お歳暮が南魚沼産のこしひかりとは。年の瀬にようやく幸運が訪れたような気分になった。
まさに「良いお年をお迎えください」である。
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