今年も美味しくいただきます
米が少なくなり、いつもの米屋に。20年以上お世話になっているからか、顔を見ただけで、いつもどおりの分づき具合いで搗きあげてくれる下町の米屋である。
コロナ禍の影響で飲食店向けの売上が減っているはずなのに、店主の顔にはそんな苦しさはない。
コロナ対応が全面解除になることへの期待と、扱っている米のほとんどが新米になったことが合わさり、今は安堵と晴れやかさが綯い交ぜになっているので、ここまで経験した辛いことは忘れることにしたと彼女は語ってくれた。なんとも前向きな人である。
当然、私も新米を手に入れた。新潟産のこしひかりをベースにして、ほかの産地の米を何種類か配合した、この店(正確に言えば、この卸売業者)特製のブレンド米である。
……………
余談だが、私はコーヒーと同様、旨いブレンド米を作れる米屋は産地米という名のストレート米の吟味にもうるさいと信じている。
……………
新米なので、いつもより水の量を減らし気味にして炊き、出来たてを試食してみると甘さも粘りもほどよい。ありがたいことに水加減も失敗しなかったようだ。
これなら今年も美味い米が食べられそうだ。
育て上げてくれた農家の人々と絶妙なブレンド米に仕上げてくれた店に感謝しながら食べさせてもらおう。少なくともこれから2~3カ月は、米が“季節のごちそう”になるはずだ。
今年も美味しくいただきます。
・─────────────────────────・
『霜降』‥秋の最終章。澄み切った冷気に包まれ霜が降る。山粧う時。
[1024 - 3949]
・─────────────────────────・