目の前に現れたトリアージュという現実
今日の東京の新規感染者は4989人。5000人を越えた先週より少ないとは言え、危機的な数字であることに違いはない。
国立国際医療研究センターの大曲貴夫国際感染症センター長は、都幹部と専門家によるモニタリング会議で「制御不能な状況」との認識を示したという。これまでの危機的を越えた絶望的な発言である。
入院、自宅を問わず罹患した人への報道も増えている。これを警鐘を鳴らす取材と捉えるか、必要以上に煽り立てていると捉えるかは意見の分かれるところだと思うが、いずれにしても、現実を切り取った取材と言えるだろう。
とにかく、科学的な知見に基づいて冷静な発言に心掛けてきた医療関係者や感染症の専門家が、これまで言葉にしなかった“本音”で訴えるようになったということに間違いはないだろう。
制御不能という発言を聞いて私はドキッとした。危機的という“的”が付いていれば、まだなんとかなるだろうが、“不能”となると話は違う。感染症の専門家から手の打ちようがないと言われると、途方に暮れるばかりである。
一方で、WHO出身の感染症対策分科会の尾身会長は「救える命が救えなくなる。混雑が予想される場所を中心に人流を5割減らす必要がある」と発言している。
こちらは氏らしく、現状を市民生活に沿った行動変容への提言として穏やかに発言しているようだ。
ちなみに、国は公式には何も発表していない。これではお盆の帰省やリゾート地に出掛けたりする人たちが減るわけはないだろう。
人命を救うために厳しい言葉で苦言を呈している専門家と、個人の権利を守ると言いながら、現状解決に手間取っているだけで、すべて“読み込み済み”とする国。どちらの言い分が適切なのだろう。
トリアージュの対象になりたくない私は、専門家のほうに耳を傾けようと思っている。
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『立秋』の候‥残暑厳しいなかにも秋の気配を感じ始める頃。
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