なぜの連続だった
戦勝記念日のプーチン大統領
5月9日。宣戦布告か勝利宣言かと噂されていたプーチン大統領による対ドイツ戦勝記念日の演説は、NATOに対する非難はあったものの、ロシア軍が祖国のために戦っていると称えるだけで、ドンバス地域の併合などの刺激的な話題には触れないものだった。
しかし、プロパガンダで洗脳されたロシア国民にとっては“きれいな”演説だとしても、フェイクニュースも含めて情報が飛び交っている国々から見ると、欺瞞に満ちた演説と切り捨てるべきものでしかなかった。
なぜ大統領は本心を隠しているのだろう。これもKGB流の人に恐怖心を抱かせる方法のひとつなのだろうか。
なぜウクライナを焦土化してロシアの力を世界に見せつけると言わないのだろう。戦局の思わしくない展開に直面して、さすがに今は言えないということなのだろうか。
なぜNATO諸国が参戦すれば核攻撃も辞さないと言わないのだろう。脅せば脅すだけNATO諸国の結束を促すことになると判断しているのだろうか。
なぜウクライナという国名を避けてドンバスとしか言わないのだろう。大統領の頭の中ではすでにウクライナという国は消滅しているか、必ず消滅させると心に誓っているからだろうか。
なぜ軍を前にして、これ以上はないほどの叱咤激励をしないのだろう。軍の忠誠心が低いことや、司令官や士官の統率力欠如に気付いたからだろうか。
なぜいざとなれば国民総動員令を発令すると言わないのだろう。必要以上の動揺を与えたくないからだろうか。
なぜ必ずウクライナ全域を併合すると言わないのだろう。仕掛けたのはいいけれど、併合できたとしてもごく一部でしかないと悟っているのだろうか。
約11分の演説だったが「なぜ」ばかりが続くものだった。
信念がない。方策を見いだせない。聞く人の混乱と不安感と恐怖心を増長させる。レトリックに酔わせる。
方向性を示さない(あるいは示せない)演説ほどタチの悪いものはない。聞けば聞くほど、理解しようとすればするほど、次にどんな策を打ち出してくるのかが気になってしまう。
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[season12/0509/24:50]
『立夏』‥風薫り、夏の気配を感じ始める頃。菖蒲の節句。そら豆
photograph:ueno park, taito city
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