∞∞この続きはコーヒーと一緒に∞∞

その日その時、感じたことを感じたままに。まるで誰かと語り合うコーヒーブレイクのように。

≡≡ 偏西風に乗って ≡≡

のどかな攻撃。不気味な監視。

 第2次世界大戦中、日本軍は「風船爆弾」という名の新兵器を使ってアメリカ本土を攻撃した。和紙にこんにゃくを塗り込んだ気球に付けた爆弾を北半球を循環する偏西風に乗せて、北アメリカの“どこか”を攻撃しようという作戦である。
 壮大な作戦といえばいいのか、効率度外視の作戦と言えばいいのか。風任せで飛んでいく風船で数千キロ先の目標を攻撃しようというのだから、途方もない話である。それでも300個ほどが北アメリカに到達したという。数名の死者も出たらしい。

 その時利用された偏西風のルートは、現在も北アジア─北米線の飛行ルートに活用されている。
 バンクーバー・シアトル・サンフランシスコ・ロサンゼルスなどの北米大陸太平洋岸の都市に向かう時、飛行機は偏西風に乗って北米大陸に接近し、カナダ北部から太平洋上を南下する。北米大陸が近づくにつれて、機体の左側に北アメリカ大陸が見えるようになるのは偏西風ルートを利用しているからである。

 その偏西風を、今度は中国が利用したらしい。70年前に飛ばされた風任せの風船とは違い、ある程度の方向制御も出来るらしい。そのため、目標にする都市の上空を飛ばすことも可能だという。つまり、ICBMの基地であろうが、NORAD北アメリカ航空宇宙防衛司令部)の基地であろうが、どこでもお望み次第に飛んでいき、監視も攻撃も可能というわけである。
 アメリカやカナダはそれらの気球を撃墜し、現在それらの残骸を調査しているという。

 中国は飛ばした事自体を否定しているが、撃墜した残骸を調べればすべては明らかになるはずだ。しかし「なぜスパイ衛星や攻撃型の衛星ではなく気球だったのか」という疑問は残ったままだ。
 素人考えの想像で恐縮だが、中国は監視よりも将来実用化するはずの電磁波攻撃の下準備をしようとしているのではないだろうか。少なくとも風任せで飛ばして、どこかでドカンなんてことを考えていないことは確かだ。

 のどかな時代から不気味な時代へ。偏西風を利用した軍事作戦にどんな結末が待っているのだろう。
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[season13┃15 Feb. 2023┃12:40 JST
:ROUBAI(winter sweet):
ueno toshogu botan-en, taito city
Photographed on 28 Jan. 2022