∞∞この続きはコーヒーと一緒に∞∞

その日その時、感じたことを感じたままに。まるで誰かと語り合うコーヒーブレイクのように。

≡≡ 花手水 ≡≡

おもてなしの心が伝わってくる
『花手水』

 近頃、手水舎を花で飾るようになった神社仏閣が増えたおかげで、お清めの手水を使う時が楽しくなっている。
 一説では数年前に京都のお寺で始まったものと言われているが、手水を使うのもはばかられるようになったコロナ禍で一気に広がった神社仏閣の“新しい楽しみ方”である。

 手水鉢の水面いっぱいに広がった季節の花々を見ているとそれだけで楽しくなってしまう。本来の手や口を清める作法を忘れてしまいそうになることもしばしばと言っても過言ではない。
 しかも、この花手水は和花だけでなく洋花も自由に使われるため、ひっそりと佇んでいた手水舎が一気に華やぐという効果もある。

 これまで神社仏閣はひっそり佇む庭を整えたり、縁起物を配置したりすることで印象を高めてきたが、私が見知った限りでは、生花で演出するという発想はなかった。
 そんな古典的な風習に風穴を開けたのがこの花手水である。いわば神社仏閣を視覚的に楽しむトレンドと言ってもいいだろう。

 私はこの花手水を、多くの人々に参拝してもらいたいという社寺の願いを垣間見ることよりも、参拝してくれた人々に癒やしの時を提案しようとするおもてなしの心だと解釈している。
 いまやスタンプラリー化してしまった『御朱印』や、参拝した証を残そうとした『千社札』と比べて、花手水は“愛でる”とか“記憶に残す”といった印象が圧倒的に強い。しかも社寺のおもてなしの心も感じられる。

 手水鉢にさり気なく生けられた花々を愛でながら参拝する風習が末永く続くように願うばかりである。
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[season13┃07 Mar. 2023┃12:10 JST
┃HANA-CHOUZU(Floating flower)┃
Ueno toshogu, Botan-en Photographed on 28 Jan. 2022