一年でもっとも長く陽光が降り注ぐ頃
夜明けはあくまでも早く、夕暮れはあくまでも遅く。一年でもっとも陽のさす時間が長い『夏至』の節季がやってきた。
一年でもっとも昼が短い『冬至』から始まる二十四節季では、この『夏至』の時期を一年の折り返し点と位置づけ、「陽遁」から「陰遁」へと変わっていく時期としている。江戸期に編纂された『暦便覧』でも「陽熱至極しまた、日の長きのいたりなるを以てなり」と記され、陽の長さに注目が集まっている。
ひと言で折り返し点と言われても、現実問題として、熱気に満ちた真夏はまだ先の話。収穫したものを蓄える“陰の時期”といわれてもしっくりとこない。どちらかというとモノゴトがせめぎ合う“混沌の時期”といったほうが納得できるような気がする。
ところで、仏教では蓮を特別な存在としている。蓮の上で釈迦が瞑想したとされていることに由来した仏像の蓮華が代表的な例だが、もともとは、泥の中から水上に伸びて美しい花を咲かせる蓮を、悪事や嘘にまみれた現世から、澄み切った真実を導き出すものとして例えたことから始まったと言われている。つまり、濁りきった現世を浄化するのが仏教の教えというわけだ。
梅雨真っ盛りで気持ちが沈みがちになる時期だが、季節の流れ=気の流れと受け止めれば、混沌の中から清浄な実りを得るための時期とも捉えられる。言い換えれば“グチャグチャからスッキリを産む時期”である。
『夏至』の節季は、将来の収穫を確実にする時期。そうポジティブに考えて過ごすとこれまでと違った風景が見えてくるような気がする。
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[season13┃21 Jun. 2023┃13:05j JST]
『夏至』の節季:陽の長さ。一年の折り返し。夏野菜。蓮華。
┃HASU:nelumbo nucifera(1/3)┃sinobazu pond, taito city.
Photographed on 14 May. 2020