∞∞この続きはコーヒーと一緒に∞∞

その日その時、感じたことを感じたままに。まるで誰かと語り合うコーヒーブレイクのように。

復活・復刻・復刊・リバイバル(その2)

【懐かしき日々を取り戻す復刻・復刊】


 10年以上前に復刻されていた1960年代の『JTB時刻表』が電子書籍として再登場した。
 明日乗る列車の時刻を知りたい時には時刻表というのは周知のところ。しかし、50年前のそれはマニアと研究家以外は誰にも必要がない。
 実は、再・復刻された電子書籍の実物(?)にはまだ触れていないのだが、当初の復刻時には見るチャンスがあった。
 初代東海道新幹線が動き始めた時のもの、東北本線の複線化と全線電化が完成した当時のものなど全5冊の復刻だったが、鉄道ファンでもない僕にとっては単に懐かしいだけのものだった。
 そんな「昔の時刻表」がiアプリ電子書籍として再・復刻された。
 きっと、当時時刻表にお世話になっていた団塊世代にとっては飛びつきたくなる電子書籍になるはずだ。右肩上がりで仕事に取り組んでいた日々を時刻表を介して思い出し、ノスタルジーの世界に浸ろうという読者が大半を占めると想像できる。
 言ってみれば「戦後の高度成長期の時間割」が「最新のデジタルメディア」になって再登場したわけだ。


「高度成長期のエネルギー未だ衰えず」でもあり、「あの頃をもう一度」という心情も入り混じっている。


 1954年から35年間も書き続けられてきた手塚治作『火の鳥』も復刻された。この6月末までは記念キャンペーンも各種開催されているらしい。
 日本マンガ界の最高峰と言っても過言ではないこの作品がデジタル化され復刻されたというのも時刻表と同じような理由が考えられる。つまり、高度成長を支えた団塊の世代がターゲットになるのもうなづける。
 僕もある時期、読んでいた。だが、少し「重すぎる」感じがしたのだろう。当時さほど真剣に読んだ覚えはないが、「すごいマンガ」という印象は強く残っている。


 読んだことはないが、あこがれの対象として見ていた文庫も復刊された。日本の知識を集大成した弘文堂の『アテネ文庫』である。
 昭和23年にデビューした文庫だが、今回は『封建文化と近代文(長谷川 如是閑)』『西田哲学(務台 理作)』など40冊が復刊した。
 僕が本好きになった頃には、さすがに書店でも売っていなかったが、若かった僕にとっては背伸びをしても読めそうにない高度なものばかり。図書館などで見るたびに「これは無理」と目を逸らしていたのを覚えている。
 またしても団塊世代対象である。戦後の混乱期、高度成長期、バブル期など日本が経験してきた「大舞台」をすべて経験してきた彼らの青春がそこにはあるのだろう。まとめて買うことは無理そうだが、何冊か手に入れてしっかりと読みこんでみよう。
 


【日本人が置き忘れてきたものこそ復刻を】


 団塊の世代、30〜40歳代というように、年齢層を区切った復刻モノが各分野で登場している。いずれも「懐かしさ」をテーマにしたもののように見えるが、それだけではないように感じている。
 今、再浮上してきた当時の看板商品には、出てきたものがすぐに消えていくような「ある種の切なさ」がない。しっかりとした「モノづくりへの姿勢」や、じっくりと育てていく「モノへの愛情」が備わっているように思う。
 ここまで書いてきて、このムーブメントは、商品ではなく、精神論としてとらえるべき問題ではないか、と思うようになってきた。そして、日本人がどこかに置き忘れて来た姿勢や心構えの「復刻」こそ、今、求められているのではと確信するようになった。


 それはそれとして、団塊ネクストの僕にとっての「青春回帰のキーワード」はどこにあるのかと改めて考えてしまいそうだ。


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