∞∞この続きはコーヒーと一緒に∞∞

その日その時、感じたことを感じたままに。まるで誰かと語り合うコーヒーブレイクのように。

復帰と悠々自適と知恵袋

【悲壮な覚悟の復帰】


 今回の原発事故を復旧させるべく、原発関係の職をリタイアしていた250名が声を挙げたのはもう1カ月以上前の話。当初はツイッターでもFukushima50というハッシュタグ付きで盛んにタイムラインが並んでいたが、いつのまにか、50名が250名に増えている。
 「原発は専門家でないと扱えない。しかし今は人数が足りない」という思いから有志が結集したところから始まった動きだが、今では「若い人より放射線の影響が出るのに時間が掛る」と放射能の影響を口にするようになった。
 つまり彼らは正真正銘の「決死隊」、あるいは「特攻隊」と極論してもいいだろう。
 原発で働き、定年を迎え、悠々自適の生活を楽しんでいたであろう人たちをここまで追い詰めなければいけないほど状況はひっ迫している。しかも、弱点のすべてを知り尽くした彼らだからこそ、後方支援活動を選ばずに最前線に出ることを選んだ。
 彼らの心情は痛いほど分かる。僕が彼らと同じ立場なら、同じようにしていたかもしれない、。
 それでも僕は、こんな「復帰」はあってはならないと固く信じている。原発復旧に関して「死が作り出す英雄」は出してはならないのだ。


【悠々自適で暮らす真の超人】


 池波正太郎の『剣客商売』の主人公、秋山小兵衛は還暦を迎える頃に40歳以上年が離れた、おはると再婚し鐘ヶ淵に小さな居宅を構え、悠々自適、かつ老いて益々盛んに暮らしている。そんな彼、実は剣の達人。息子の秋山大治郎を従えながら、社会の闇の中でうごめく巨悪を一刀両断にしていく「超人」である。
 年齢を重ねてくると、「体力的に」とか「ボケてきたから」とか「若い人に任せて」と言う理由で社会から強制的にリタイアさせられるのが通常なのに、彼にはリタイアしたように見せかけて実は……、という魅力が隠されている。
 だからこそ、藤田まこと主演のテレビ番組も作られたのだろう。
 実は、僕はこんな彼の生き様にあこがれている。
 周囲からは「人畜無害」とか「後方部隊」とか見られているが実は、慎重な下調べと鋭い考察、ここぞという時に一瞬で物事を解決する超人的な力を備えている彼。もちろん老いて益々盛んという点も見逃せない。
 彼のように「能ある鷹は爪を隠す」を実践できれば、これほど充実した暮らしはないだろう。


【おばあちゃんの知恵袋】


 以前、テレビで『伊藤家の食卓』という番組があった。毎週、暮らしの中でちょっと困っていることを、思いもよらないような方法で解決してしまおう、という番組だった。
 昔から言われている「おばあちゃんの知恵袋」の家庭版という設定だが、見るたびに「ホホー」と感心しながら見ていた。
 実生活でその時に必要な生活の知恵をポンと出してくれ、なんでも簡単に片づけてしまうのは「おばあちゃん」と言われてきた。おじいちゃんだって同じように知恵を持っているはずなのに、何故か、おばあちゃんというところがちょっと気になるが、良しとしよう。



【今こそ復帰の時】



 多くの経験を積み、困難を乗り越えてきた年長者だからこそ出来ることがある。むやみやたらに「当たって砕けろ」でもない。「元気、元気」でもない。ある程度の予測と大胆な意思決、そして柔軟な対処方法で難問を解決していく能力は年長者でないと発揮できない。
 若ければいいというのは、物事が好調に推移している時の話。困難な事象に取り組む場合は経験がものをいうというのも周知の事実。
 老獪な思考と慎重な準備、そして大胆な行動と柔軟な危機管理が必要になればなるほど、経験を積んだ年長者の実力が発揮されるはずだ。
 高齢化社会というのは従来の若年層の希薄化も示している。そんな現代、リーダー、参謀、最前線、補給部隊という役割分担が従来通りでは通用しなくなっているのは自明の理であろう。
 キャリアを積んだ年長者諸君よ、今こそ実力を見せつける時がきた。もう一度、立ち上がり、活発にそして楽しく最前線に復帰しよう。