【仲間意識】
企業でも政治でも学問でも、もちろん宗教や地域社会にも、それぞれの集団に属する人間たちだけが共有する「仲間意識」が存在する。
そうでなければ円滑なコミュニケーションが取れなくなり混乱が起きるとか、事業や知識、習慣などの円滑な継承が出来なくなる。もちろん仲間意識という安心感も生まれるだろう。
ある意味では「仲間」こそ最後の砦なのだ。だからこそ、仲間にしか分からない言語形態を構築したり、新たに仲間入りさせる場合には非常に高い審査基準を設けたりしている。当然、仲間のことは信頼し、万一、仲間が失敗をした場合も何事もなかったように隠蔽したり、真実を歪曲したりすることで「穴埋め」をする。そんな強い仲間意識があるからこそ、一旦その集団から離れた者は監視されるだけでなく、時として迫害に近いダメージを与えられる。
念のため、もう一度言っておくが、これは「広域暴力団やテロ集団」だけの話ではない。大なり小なり、どこにでもある話である。
【利害関係】
そんな強い絆で結ばれた「仲間社会」では仲間内での地位や権力が実力以上に評価されることが多い。もちろんそこには金銭的な利害関係も付随してくる。
社会一般の常識でもあるが、ある程度高い実力があっても、その実力だけでは高い地位や発言力を得ることはできない。仲間内での人物評価が重要なファクターになる。そして、そんな仲間内での高い評価を得るために、その社会は閉鎖性を強めていき、一層強い仲間意識を生み出す。
【原子力村・電力村】
現在日本で、最も注目されている仲間社会は原子力村と電力村だろう。
メリットを最大限に強調して伝え、デメリットは違う世界のものであるかのように情報を歪曲して伝えてきた原子力と電力の世界。もともと、原爆で放射能の怖さを実体験として持っているにも関わらず、平和的に利用することで安全でクリーンな電力を供給する、という導入当初の発想を貫くためには何が何でも強い仲間意識がなければならなかったことは理解できるが、結果的にデメリットはすべて隠したり言葉を変えて発表することになった。
もちろん導入されたのが戦後の復興期で、アメリカからの提案は聞かなければならない絶対条項であったことや、それに伴う強大なバックアップがあったことも見逃せないが、今や遅し。事態は彼らにとっても想定外の方向に進み始めていることも付け加えておこう。
学問の世界では研究者としての地位や発言力。政治の世界では大きな影響力。経済の世界では巨大な利権。このトライアングルが強く結びついた時、そこには他者が侵入出来ない強大な関係が生まれる。同時に、一般社会を無視してでも自らの組織を守ろうとする力が働き始める。
実は、この図式はどのような仲間社会でも共通していえることで、あのような大事故が起きなかったら、ここまでその閉鎖された社会にスポットライトが当たることはなかったろう。そして、この村社会に属している人々は未だに高い地位と権力を持った特権的な生活を送っていただろう。
原子力関係者にとっては、これまで積み上げてきた「知識の巨塔」が崩壊しそうな危機感。電力関係者にとっては、これまでに蓄えた利潤をすべて吐き出しても追いつかないほどのオーバーコスト。彼らが作り上げてきた社会資本は今や単なる負の遺産になりつつある。
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