∞∞この続きはコーヒーと一緒に∞∞

その日その時、感じたことを感じたままに。まるで誰かと語り合うコーヒーブレイクのように。

雨降りだからミステリーでも勉強しよう

植草甚一氏】


 確か高校生か浪人中だったと思います。『ワンダーランド』という雑誌が創刊されました。創刊号はなんとも大きなサイズで通常の雑誌の2倍くらいあったのではないでしょうか。店員さんも通常の紙袋に入らずレジカウンターで困っていたのを今でも覚えています。
 実はこの雑誌、その後『宝島』というタイトルに変更され、今度はB5判より小さなポケット判に近い大きさになりました。
 そして、その雑誌が『別冊・宝島』を生み、発行元の宝島社は『sweet』や『InRed』など本格的なバッグやポーチを付けた雑誌として大ブレイクしていきます。


 で、その『ワンダーランド』で責任編集をしていたのが植草甚一氏です。もともとは映画関係の雑誌などで活躍されていたようですが、映画、ジャズ、外国文学、ヒッピー文化、地球環境など当時の若者にとって魅力的だったテーマを知りつくし、広げてくれる「ヒーロー」でした。
 氏の著作の中に『雨降りだからミステリーでも勉強しよう』(1972年・晶文社刊)という一冊があります。僕にとっては、内容は覚えていないのにタイトルだけはしっかりと覚えている本のひとつ。同じミステリー作品をガイドするにしても、氏のバックグラウンドを垣間見てきたファンにとっては本の指向まで判ってしまいます。
 ちなみに、今どきのタイトルで魅力的に見せる手法の原点でもありますが、本質的にはまったく違う方向性の本作りだったと僕は確信しています。


 雨がしとしとと降り続いた今日、僕はそんな植草氏の著作のことを思い出し「雨降りだから小説でも読もう」状態に。本を読みながら「こんな読書三昧で過ごした日は、おそらく10年ぶりくらいじゃないか」と思いつつ、俄か読書人になってしまいました。
 ということで、植草甚一氏に敬意を払う意味を込めてという理由を付けて、またもや神保町の「古書店巡り病」に罹りそうになっています。イカンなと思いつつも、この病、直りそうにありません。


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