∞∞この続きはコーヒーと一緒に∞∞

その日その時、感じたことを感じたままに。まるで誰かと語り合うコーヒーブレイクのように。

おいしい気持ちという名の隠し味

【とあるトンカツ屋にて】


 友人のコンピュータ係として午後を費やした後、友人宅近くの小さなトンカツ屋さんで夕食ということになりました。
 小さな街の小さなお店。外観は昭和の風情、小上がりにはスポーツ新聞が。かなり年配のご夫婦だけで商っていらっしゃるようです。「トンカツ」「ロースかつ」「ヒレかつ」「メンチカツ」「チキンカツ」「海老フライ」。メニューもシンプル、これだけです。
 正直なところ、ファースト・インプレッションは「大丈夫かな」。しかし、友人の奥様が「密かに美味しいのよ」と。こちらはごちそうになる身のため、不安を隠して「トンカツ定食、ご飯大盛」をオーダーしました。


 注文して数分、テーブルに並ぶのを見て、……「オッ、旨そう」と。ソースを掛け、辛子をつけ、ひと口。……「本当に旨いわ」。


 充分過ぎるほどの肉厚。ほど良い柔らかさ。しっとりと肉に絡みつく肉汁の具合。適度な厚さでカリッと揚がった衣。サラダ油とラードが混ざった旨みのある油。
 どれもこれも感心することばかりでした。


 こうなると、話をしながらなんてことは考えません。黙々と食べる。脳からの指令はそれしか出なくなっていました。
 食べながら感じたのは「丁寧だなあ」。手抜きせず、素材に手加減を加えず、気持ちの暖かさが伝わってくるサービスという当たり前のことがいかに大切なことかを改めて教えられたような気持ちになってしまいました。
 食べ物のことを商品と言うお店に多い「ごまかされているような気分になる食」が増えてしまった今、きちんとした料理を手頃な価格で提供するお店と出会えたことだけで嬉しくなってしまいました。もちろん、満腹。「おいしい気持ちという名の隠し味」までいただきました。ごちそうさま。


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