∞∞この続きはコーヒーと一緒に∞∞

その日その時、感じたことを感じたままに。まるで誰かと語り合うコーヒーブレイクのように。

プロテスト・ソング

【60年台のアメリカで】


 ベトナム戦争が泥沼化するのが確実になり始めた1960年台のアメリカで一曲の反戦歌が誕生しました。


 〈We shall overcome:勝利を我らに〉


 元々は50年台半ばのアメリカでマーチン・ルーサー・キング牧師を先頭に公民権運動が盛んになった時に歌い始められたスピリチュアル(霊歌)だったものを、フォークシンガーの神様とまで言われているピート・シーガーがwillをshallに変えて公民権運動を象徴する歌として世界中に広めたものです。それがベトナム反戦デモの時にも使われるようになり、いつの間にかプロテスト・ソングの代表とされるようになりました。
 ちなみに、僕が初めて聴いたのは高校生の頃だったと記憶しています。当時の日本はベトナム反戦体制崩壊を目指した学生運動真っ盛り。「全共闘」「内ゲバ」「セクト」「アジビラ」などの言葉が日常会話のように使われていた時代です。日本の反戦集会ではこの『ウィ・シャル・オーバーカム』も歌われていたと記憶しています。


 過激な言葉など一切出てこないけれど強烈な反戦歌として世界中の若者達に歌われたピーター・ポール&マリーが歌う〈Where have all the flowers gone〉はピート・シーガーが彼らに贈った曲でした。 また、アメリカを愛する反戦フォークシンガー、ウッディ・ガスリーの持ち歌〈This Land is Your Land〉もピート・シーガーはよく歌っていました。
 アメリカが好きだから、アメリカで共に住む黒人に公民権を。アメリカが好きだから、闘うことに反対する。アメリカが好きだから……。
 アメリカの良心とまで言われているピート・シーガーが1月27日に亡くなりました。94歳。老衰だったと伝えられています。
 しかし、亡くなったからといって、ひとつの時代が終わったとは考えたくありません。彼の思想は僕も含め世界中の多くの人たちに受け継がれているのですから。
 彼の死を知った今日、久しぶりに〈We shall overcome〉を口ずさんでみることにします。


 ご冥福をお祈りいたします。安らかにお休みください。あなたの歌と精神は後世まで伝え続けられます。


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