∞∞この続きはコーヒーと一緒に∞∞

その日その時、感じたことを感じたままに。まるで誰かと語り合うコーヒーブレイクのように。

アルマーニが作る小学校の制服

【なるほど、銀座だな】

 東京銀座にある中央区立泰明小学校の標準服が来年度からアルマーニ製になるとか。はじめて聞いた時の印象は「なるほど、さすが銀座の小学校だわ」でした。

 あの世界のハイブランドアルマーニ」であり、トータル価格も8万円以上ということで「高すぎる」とか「アルマーニなんて!」とか「公立なのに」とか、まさに百科騒乱の様相になっているようです。たしかに小学生の時からアルマーニプレタポルテを着るなんて俄には信じがたい状況です。
 校長先生が率先してシャネルやエルメスバーバリーなどにも交渉をした結果、制服作りを飲んでくれたのはアルマーニだけだったとのことですが「子供の時は質素であれ」を心情としているヨーロッパが取り合わなかったのは当然でしょう。また、私立小学校受験の面接時、子供に着せるべき服の代表格になっている銀座の老舗子供服店だって、さすがに地元の公立校の制服となると尻込みしたはずです。

 ですが同時に、周囲の大人たちが泰明小学校を「あの銀座の小学校と色眼鏡で見ている」ため生活態度をはじめとして窮屈な学校生活を強いられてきたため、何かしらの解決策を見出さないといけなくなったのが騒動の始まりだったのではとも思えます。
 むしろ、こんな窮屈さを公立小学校の生徒や関係者に要求してきた周囲の大人たちに大きな間違いがあったのではないでしょうか。

 それはそれとして。

 どうしてブランド志向なんでしょう。校長先生は「学校に対する誇りを育て、スクールアイデンティティを芽生えさせるため」とおっしゃっているようですが、制服で学校に対する誇りが生まれるのでしょうか。「銀座で育つ」ことにプライドを見出すならほかのアクティビティがあるのではないでしょうか。
 たとえば、ファッションに気を配れる人を育てたいのなら、シャツの形や色を増やしたり、スカーフをプラスしたりというようなアイテムの選択肢を増やす方法だってあるはずです。

 ちなみに「小学校だけは地元意識を確実に植え付けるために、地元の学校でなければいけない」と信じている浅草では、その地域に住んでいることに誇りを持たせるための方策のひとつとして三社祭を基準に町会別の子供グループを構成して、神輿を担ぐ時の序列やマナーを自然と学ばせ、そこから一生持ち続けられる地元愛を芽生えさせるように図っているようです。
 当然、制服は一般的なものですが、成長してからのおしゃれに対する感性が銀座より劣っているとは思えません。

 ブランドに頼るのではなく、奢ることなく地元を愛し、地域外の人を見下さず、モノを大切にする心を教える。そんな思想こそ自意識の形成期には大切なのではないでしょうか。
 なにより「泰明小学校卒業」と履歴書に書くことはあっても「制服がアルマーニだった小学校卒業」と書くことはないはずです。

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