∞∞この続きはコーヒーと一緒に∞∞

その日その時、感じたことを感じたままに。まるで誰かと語り合うコーヒーブレイクのように。

≡≡ 小さな一歩。大きな一歩 ≡≡

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改正著作権法成立

 コロナ禍の中でも国会では提出された法案について審議が続いている。
 理不尽すぎて提案が見送られ、事実上廃案になって安堵した出入国管理及び難民認定法入管難民法)もあれば、歩みは小さいが偉大な一歩を踏み出した改正著作権法著作権法の一部を改正する法律案)のように参議院本会議で全員一致で可決したものもある。

 今日成立した改正著作権法は、放送番組の配信にまつわる権利処理に「許諾推定規定」を盛り込むことと、許諾困難になってしまった音源・実演・映像などについての事前許諾を不要にするという考え方を盛り込むのが主な改正点だったが、もうひとつ重要な見直しも含まれていた。それが図書館関係の権利制限規定の見直しである。

 従来は、研究者が入手が困難になった絶版本などを資料に使いたいと思った場合、一般の図書館から国立国会図書館にリクエストを出し、それを受けた国会図書館がデジタルデータで図書館に送信し、送られてきたデータを研究者が使用するという手順を踏んでいた。
 また、調査研究用であれば利用できた図書館の複写サービスも、研究者なら直接国会図書館に請求し、データ化してメールで送信してもらえることになった。しかも、権利を有する出版社や作者に「補償金」を支払うという但し書き付きである。

 実は、この補償金というのがミソなのだ。補償金=印税と読み替えてみるとよく分かるはずだ。

 出版社が権利の一切を買い取る契約でもない限り、作家は著作物が売れた時に発生する印税で収入を得ている。しかし、出版社や出版取次が管理できるのは新刊だけ。古書店で売買されたものや図書館で貸し出しされたものは管理の対象外、つまり収入は発生しないというのが常識になっている。

 本の価値は“モノ”にあるのか、著された“内容”にあるのか。

 出版社や著作者が主張できる収入は新刊以外認められないのは不可解だという永遠の課題に小さな突破口を開けたのが今回の“補償金制度”ではないかと私は思っている。

 たしかに今は、データ化が許されるものは研究用の資料であることや著作物の一部という制約が付いている。
 しかし、補償金制度を応用すれば、少なくとも電子書籍であれば、それが図書館所有のものであっても、印税を発生させることが可能になったとも考えられるのだ。
 当然「知の資産は無料で利用できる公共のもの」という常識も変わってくるだろう。常軌を逸した引用や剽窃も減るかもしれない。もちろん、現在の新刊優先主義にも変化が出てくるだろう。
 なにより、長期に渡って著作者に収入が生じるというメリット付きである。

 今回の補償金制度は、本の世界に新風を吹き込んでくれるものと期待させるに充分なものなのではないだろうか。

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小満』‥青葉繁れる頃。万物に活気みなぎる
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