『モペッド』による交通違反は
自転車の取り締まり強化とは別次元で
今から数十年前、戦後の大混乱が落ち着き始めた頃の話である。自転車の後部に小さなエンジンと燃料タンクを付けて大きな音と白い煙が特徴の『バタバタ』と呼ばれる軽便な乗り物が街中を走り回っていた。
何を隠そう、私は叔父が愛用していたこの自転車に似た乗り物に乗せてもらうのが嬉しくて堪らなかった。
その『バタバタ』の電動アシスト版が『モペッド』と名前を変えて復活して数年経つ。特にコロナ禍になってからジワジワと愛用者が増えているという。ネット通販でも家電量販店でも簡単に手に入るので、気楽に買う人も少なくないのだろう。
だが『モペッド』に適応されるルールを知らずに(あるいは無視して)走り回っている人が少なくないようだ。
道路交通法上『モペッド』は小排気量のバイクと同等の乗り物とされている。警察庁では「ペダル付きの原動機付自転車」と区分されている。
つまり『モペッド』はバイクなのだ。原付バイク以上の運転免許とナンバープレートが必要で、かつ、ヘルメット着用の上、車道の左端を走ることが要求される乗り物なのだ。
そのはずなのに「ナンバーなし、ヘルメットなし、歩道走行お構いなし」という違法運転をよく見かけるようになった。
ナンバーなし、ヘルメットなしで走行していることに後ろめたさを感じているのか、ペダルを漕いでいるような動作をしている者もいないわけではないが、ほとんどは両足を広げてスーと走り去っていく。最初のひと漕ぎ以外、ペダルを漕ぐことなく走れる『モペッド』の快適さを満喫しているのだろう。
自転車による交通違反取り締まりが強化されるようになって数週間。混乱もあるようだが、確実に自転車のマナーはよくなっている。
一方で、そんな傾向をあざ笑うかのように“自転車型の原付”を違法な乗り方で乗り回す人間も確実に増えている。
警察は取り締まり強化といっているが、どこまで強化されているのだろう。細かな職務質問になるのは理解できるが、どうしても「交通安全週間」的なキャンペーンとしか感じられないのだが。オークションサイトなども含めて、販売店や仲介業者への要請がなされているのかも疑問だ。
自転車ばかりに目を向けず、根本的に道交法に違反している乗り物への警告や刑事罰も強化してもらいたいと言わせてもらいたい。
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[season13┃17 NOV. 2022 25:20 JST]
『立冬』‥冬が始まる。木枯らしが吹き雪の便りが届く。椿咲く頃。
SUNSET:Doukanyama ave., Nishi-Nippori, Arakawa city
Photographed on 30 OCT. 2022