∞∞この続きはコーヒーと一緒に∞∞

その日その時、感じたことを感じたままに。まるで誰かと語り合うコーヒーブレイクのように。

≡≡ 偽造防止と同時に ≡≡

発想を大転換して設計された
新紙幣のユニバーサルデザイン

 報道によると、来年発行される新紙幣の見本が公表され、各地の日銀本支店に展示されることになったという。

 数年前に試作品が公表されたとき、私は数字のシンプルさに驚いた。いや、ダサいといったほうが正しいだろう。かろうじて、見本用の仮書体だからわざとこうしているんだろうと自分を納得させていた。当時はこれがユニバーサルデザイン(UD)思想で設計されているというところに気が付かなかったのだ。

 だが当初から書体は決まっていたようで、あえて“味気のない”ものを目指していたようだ。
 ホログラムや細密な彫刻などの偽造防止策に話題が集中しているようだが、私はそれ以上に格調の高さよりも視覚障害者にとっての実用性を優先させた点に注目している。

 現在流通している貨幣はお札の端に点字用の立体印刷(エンボス加工)が施されていた。視覚障害者はその「ポツポツ」を指先で読み取って金種を見分けていた。
 それに対して新紙幣では金種の文字全体がエンボス加工の印刷になっているらしい。しかも、確実に金種が見分けられるように健常者からみるとシンプルすぎる書体を採用して確実性も高められている。

 ユニバーサルデザインは、年齢・性別・文化・身体状況などの多種多様な個性や違いに対応するデザインや色彩計画を基本にしたモノ作りや環境を提供する思想と言われている。また、その思想を活用した変更やリフォームはバリアフリー(化)と定義づけられている。どちらも、誰もが利用しやすく、暮らし易い社会を目指した考え方である。この定義に従うと、交通機関や公共施設で行われているリフォームはバリアフリー(化)に当たる。
 それに対して紙幣は毎回新たな設計で制作される。そう考えれば、今回の新紙幣はUD思想で設計されたものといってもいいだろう。
 UDは健常者からみるとシンプル過ぎたり、余分な情報が多いと見られることもある。しかし誰もが使う紙幣自体がUDだったと認識されるようになれば、日本のUD化は一気に進むのではないだろうか。

 低金利一辺倒の政策には疑問があるが、こと紙幣に関しては日本銀行の英断に敬意を表したい。今回のUD化は社会生活に大きな変化をもたらすかもしれない。
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[season13┃16 Apr. 2023┃13:40 JST
┃CHERRY BLOSSOM in YANAKA 6/9┃
yanaka cemetery, ueno park, taito city.
Photographed on 02 Apr. 2022