∞∞この続きはコーヒーと一緒に∞∞

その日その時、感じたことを感じたままに。まるで誰かと語り合うコーヒーブレイクのように。

≡≡ 白黒フィルム復活 ≡≡

写真の味は粒子の粒立ち具合いから

 高校に入学してクラブ活動で写真部を選んだ僕は、まず最初に先輩からフィルム現像や暗室作業を教えてもらいました。

 あれから数十年。デジタルカメラが主流になり、コダックが写真事業から手を引き、富士フィルムが白黒フィルムの生産を終了しと、写真の世界には未曾有の地殻変動が起こり、結果的に「写真の味」という言葉も時代遅れなものになってしまいました。

 コダック銀塩粒子粒子のエッジが鋭いので強い表現が出来る。フジは少し丸いので固めに現像するとシャキッとする。サクラは丸い上にぼやけているのでポートレート用以外は使わない。そんな基準でフィルムを選びながら「写真していた」記憶はいまだに鮮明に僕の頭の中に残っています。
 出版社で働いているうちに、写真は「表現手段」であるだけでなく「伝達手段」でもあると認識は変わりましたが、それぞれのフィルムがもっている「銀塩粒子の性格」が写真技術の基本だという認識は変わらずに持ち続けていたつもりです。

 ところが、あれよあれよという間にデジタルカメラが主流になり、エッジの立ち方やコントラストの付き方を見定めることから始めていた写真の方程式は根底から変わってしまいました。

 ピクセル単位で光や色を再現するデジタル画像は均質な色再現は得意だけど「味や個性」は出せません。こうなると、自ずと画像に手を加えて納得出来る表象を創り出すことになります。
 現代版の暗室といってもいいアドビ・フォトショップを使って、RGBデータで構成されたピクセルの集合体をどう「いじっていくか」を考え始めたわけです。
 ところが、フィルムがもっていた「味」、つまり、銀塩粒子がもっていたプチプチ感やザラザラ感はデジタル画像では出せないんです。

 今、フィルムを知らない世代が「モノクロってかっこいい」と言っているのとは次元が違うのは判っています。色がついているかどうかよりもザラッとしているか、ヌメッとしているか。僕はそちらのほうが気になるのです。

 そんな風潮のなかでの白黒フィルム復活。どうやって現像するかという大問題は残りますが、ネガさえ出来れば高精度にスキャンしてモノクロらしい写真を創り出せるような気がしてきました。

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