自然が自然を破壊する新たな試練
海底火山の噴火で噴出した軽石が沖縄諸島や奄美大島に漂着し続けている。これ以降日本列島の太平洋側全域に漂着する可能性が大きいという。
軽石を水冷エンジンが吸い込ぬためあらゆる船が運行不能に陥ったとか、養殖されている魚がエサと間違えて食べてしまい死んでしまったとか、景観がウリの白浜がグレーになってしまったというような人的被害が次々と伝えられている。
報道では、海岸から軽石をパワーショベルで掬い上げる光景が伝えられているが、見ているだけで途方もない作業と言うしかない。
なによりも、船でしかつながっていない離島の生活は崩壊してしまうのではないだろうか。
だが、本当の被害はこれから出て来るのではないだろうか。軽石が細かく砕けて海底に堆積すると、まずサンゴなどの岩に張り付いている生物に大きな影響が出るだろう。その後まもなく、カレイ、ヒラメ、エビ、カニなど海底に生息している生物も生息場所を失ってしまう可能性が高いはずだ。
海流の具合いによっては、細かく粉砕された軽石が舞い上がって海の色が変わるような事態が引き起こされるかもしれない。ひょっとすると、海洋生物にとって有害な物質が放出され、定まっているように見えた食物連鎖そのものが破壊される危険性だって考えられる。
こうなると、漁業被害や観光被害云々では済まなくなる。自然が人間に課した試練でしかなくなる。
地球の長い歴史の中では数え切れないほど繰り返されてきたことだろう。だが、人間がそこにいる限り、“自然が自然を破壊する現場”と直面することは、生きる場所を失うことに直結する。
どんな自然災害も乗り越えてきた人間が、どうやってこの難題を克服するか。またひとつ自然は人間に試練を与えたのだろうか。
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『霜降』‥秋の最終章。澄み切った冷気に包まれ霜が降る。山粧う時
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