懐かしいけれど、ウーン、食べるかな
クジラの商業捕鯨が再開して数カ月。水揚げ、店頭販売、メニューの拡充など盛んになっているようですが……。
まだ幼い子供だった頃、我が家では冬になると日曜日の夜になると『クジラのハリハリ鍋』がよく食卓に上りました。当時は部位のことなど分からずに食べていましたが、美味しかったことだけは覚えています。
数十年前、クジラの「尾の身」と水菜を薄味の醤油味の出汁で仕立てた鍋物は一般的な食べ物だったのではないでしょうか。
ハリハリ鍋と一緒に、地域によっては「サラシクジラ」と言われている、クジラの「おばけ」の酢味噌和えもよく食べました。「尾の身」がクジラの尾の付け根あたりだとすると、こちらは皮下脂肪。大人にはあのシャリシャリとした食感がよかったのでしょうが、まだ幼かった僕にとっては酢味噌を食べているようにしか思えなかった記憶があります。
大人になってからは、飲めないのに出入りするようになった居酒屋ではクジラの「ベーコン」を「烏龍茶のアテ」にしてツマむようになりました。
一方、小学校の給食として月に何度かはクジラの「赤身」の竜田揚げが出ましたが、こちらは独特の臭みがあり、残さずに食べるのにひと苦労したのを覚えています。なかには、コッペパンの中に肉を押し込んでこっそりと持ち帰っていた友だちが数人いたことも覚えています。
そんななかで僕は「同じクジラのはずなのに、どうしてこんなに味が違うのか」なんて疑問を持つこともなく食べていたので、マッ、いい子だったのかもしれませんね。
しかし今、商業捕鯨が再開したからといって積極的にクジラを食べたいと思うかと言うと疑問です。「尾の身」は和牛より高いとか、「赤身」は生姜や山椒やネギなどで独特の臭みを取ってからでないと食べられないというようなイメージが付いてしまってから30数年。ガッツクには多少時間が掛かるかもしれません。
ちなみに、僕は「自然保護のために食べない」とか「可愛いクジラを食べるなんて」というような高尚な理念は持ち合わせていません。「美味しければ食べる」。食の世界はそれでいいじゃないですか。
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